不正調査・不祥事対応

不正調査の必要性

企業や法人またはそれらの役員が事件、不祥事を起こした場合、できるだけ迅速な対応を行い、企業・法人経営に与える悪影響を最小限にするための管理が重要であるということは危機管理の項目においても記載したとおりです。

しかしながら、対応を行うためには、誰が、いつ、どこで、どのような行為を行ったのか、事実を調査して認定することが不可欠です。

この事実の調査が上手くいかなければ、適切な対応を行うことができませんし、真実と異なる事実を認定してしまった場合、対外的には信用を失うことに、企業・法人内では異なる事実を元に懲戒等を行った場合等に労務紛争のリスクを負うことになります。

不正調査を弁護士に依頼する必要性

不正調査は企業や法人自らこれを行うこともできます。しかしながら、企業や法人内に事実認定の経験がある者が多くいることは稀なことではないかと思われます。また、企業や法人内の者が調査を行う場合、調査を行う者自身が企業・法人内で何らかの利害関係を有していることも多く、調査にバイアスがかかってしまうことも否定できません。

そのような場合に備えて、事実認定の経験が数多くある弁護士、企業や法人と直接的な利害関係のない弁護士に不正調査を依頼することを積極的に検討するべきでしょう。

事実認定に長けた弁護士に依頼すれば、客観的で公正な調査・検証を行うことができるわけです。

当事務所は、世間の耳目を集めた案件も含め、不正調査の経験がある弁護士が複数おり、また、外部の検察官出身の弁護士とも提携を行っており、不正調査を行うことが可能です。

第三者委員会調査等

不祥事の規模が大きい場合、問題が複雑な場合及びステークホルダーが多数にのぼる場合等、危機管理対応として社内・法人内にとどまらない対応を必要とする場合には、第三者委員会等を設置して調査することが適切となります。

第三者委員会は、「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(「日弁連ガイドライン」)に沿って、利害関係のない者によって構成され、厳格な調査を行い、調査報告書を作成し、事実認定と法的な評価を行うとともに、今後の再発防止策を示すことで、法人の信頼回復を図ります。

また、事情によって「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を満たすことができない場合にも、できる限り当該ガイドラインに準拠して調査を行う内部調査委員会(呼称は様々なものがあります。)を設置し、第三者委員会と同様の調査を行うこともあります。

当事務所は、第三者委員会等の委員又は補助者経験者が複数おり、また規模が大きい不祥事の場合は、提携法律事務所の弁護士も動員し、第三者委員会等の設置及び調査を行うことが可能です。

不正調査を弁護士に依頼するメリット

1.事実の調査がスムーズに進められる

不正調査を弁護士に相談するメリットとしては、事実の調査がスムーズに進められることが挙げられます。不正調査の経験のない方には、どのような調査が必要で、調査結果を見たとしても事実をどのように認定してよいかわからないということが多々あるかと思いますが、不正調査の経験のある弁護士は、調査の方法、どの方法を用いるか、調査結果をどのように判断するか等に知見があることから、事実の調査をスムーズに行うことができます。

2.法的に適切な評価ができる

事実が認定できた場合、その事実に対する評価を行うことになりますが、経験のある弁護士はその評価において、当該事実がどのような法令・組織内ルールに違反するのか、違反するとしてその程度が重いのか・軽いのかなどの法的な評価を適切に行うことができます。

例えば、法令・組織内ルールに違反したものに対し懲戒を行う場合に、どの種類の懲戒を行うことが望ましいかをアドバイスすることができます。

また、すでに退職した者など企業・法人の外部の者に不正の原因がある場合、その者に対する刑事告訴・損害賠償請求などの法的措置について、どれくらいの見込みがあるのかについてアドバイスすることもできます。

適切な法的評価ができずに、過剰な懲戒処分を行った場合にはトラブルが拡大するおそれがあります。また、外部の者に対する刑事告訴・損害賠償請求などの法的措置についても適切な判断がされないとコストの無駄になったり、外部の評判が下がるおそれがあります。

3.公表の有無・時期・方法・内容についてアドバイスをもらえる

不祥事については、外部への影響の度合い等により、記者会見やHPへの公表等、外部に何らかの公表を行う必要が生じることもあります。

経験のある弁護士であれば、客観的な立場から、公表の有無・時期・方法・内容についてアドバイスをすることができます。

4.不祥事の再発防止策についてのアドバイスをもらえる

不正調査については、不祥事が事実であると判明した場合、企業・法人内で今後の再発を防止することが必要となりますし、外部の評判が下がるリスクを軽減するためにも再発防止に力を入れていることをアピールする必要が生じることもあります。

経験のある弁護士は、それまでの不正調査において、不祥事の再発防止のための手段について知見があるため、再発防止のために必要な手段について何をどのように講じたらいいかをアドバイスすることができます。

具体的には、内部のガバナンスの構築、監視体制・コンプライアンス体制の構築、社内規程の整備、内部通報窓口の整備、社内決裁体制の整備、社内システムの構築、人事評価制度の変更などについてのアドバイスをすることができます。

Last Updated on 2024年4月3日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
事務所メッセージ
社会の課題に対し、私どもは「世のため、人のために尽くすことが、人間として最高の行為である」という理念にもとづき、これまで培ってきた法的技術やノウハウを駆使した創造的な解決策を提供することでこれを解決し、持続可能な人類・社会の進歩発展に貢献するという経営理念の実現に向けた挑戦を日々続けております。そして、「至高」という事務所名に込めた「社会正義の実現」、「社会の最大の幸福の実現」、「持続可能な人類社会の実現」に貢献するという高い志をもって努力をし続けて参ります。

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    上場に当たって弁護士を社外取締役に選任するには?顧問弁護士に依頼することは可能ですか?

    弁護士を社外取締役に選任するには?顧問弁護士に依頼することは可能ですか?

    01 コーポレートガバナンス(企業統治)と社外取締役

    コーポレートガバナンス(企業統治)のあり方について、経営陣から独立した社外取締役を複数選任することにより、取締役会の監督機能を強化すべきという見解が近時有力です。日本のプライム市場上場企業においては、独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(スタンダード市場上場企業においては少なくとも2名以上)の選任が求められています。日本の会社法では、従来、委員会型の会社を除き、社外取締役の選任義務を課しておりませんでしたが、上記見解を受けて、令和元年の会社法改正で、公開大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書提出義務を負う会社に対して、社外取締役の選任を義務づけました(会社法327条ノ2)。この社外取締役の役割(企業統治)を担うものとして、上場企業において法律専門家である弁護士を選任するケースも多いことから、本記事では、弁護士を社外取締役に選任する場合の留意事項についてお伝えします。

    02 社外取締役とは

    「株式会社の業務執行をせず、かつ、当該株式会社ならびにその親会社、子会社及び経営陣などとの間に一定の利害関係を有しない取締役」(会社法2条15号)をいいます。

    「一定の利害関係を有しない」ことの資格要件は概ね以下のとおりとなります。

    当該株式会社自身業務執行取締役等(業務を執行する取締役、執行役、使用人) +過去10年以内に業務執行取締役等であった者 +横滑り規制
    子会社
    親会社等親会社等自身、取締役、執行役、使用人
    親会社等の子会社等②を除く)業務執行取締役等
    取締役、重要な使用人、親会社等近親者(配偶者+2親等内の親族)

    (田中亘「会社法(第4版)」(2023年3月東京大学出版会)233頁から引用)

    したがって、弁護士で上記の資格要件を満たす者であれば社外取締役に選任することができます。実務上も企業法務に精通している弁護士を社外取締役に選任することは、取締役会の監督機能強化の観点からも有用であり、実際に弁護士を社外取締役に選任している上場企業は多数あります。

    03 顧問弁護士に依頼することは可能なのか(日弁連の見解)?

    顧問弁護士は、当該会社の法務面の実情に通じており、取締役会における審議事項について実情を踏まえた問題点の洗い出しや現実的な対応策の検討が期待できるというメリットがあるため、実務上、社外取締役に顧問弁護士を就任させたいというニーズがあります。

    そこで、顧問弁護士を社外取締役に選任する場合には、顧問弁護士が前述の資格要件を満たすかどうかを検討することになります。

    この問題に関して、従前、顧問弁護士が社外監査役を兼任することの可否に関し、顧問弁護士が、監査役の兼任を禁止する「使用人」に該当するか(会社法335条2項)の問題として議論されてきました。すなわち、会社から継続的に委託を受けて法律顧問業務を行う顧問弁護士が従業員と同視されるべきでないかという議論です。

    この点、従来法務省は、民事局4課の回答で、顧問弁護士も旧商法276条(現会社法335条2項に相当)の「使用人」に該当すると解しており、「会社の顧問弁護士である者をその会社の監査役に選任する場合には,監査役就任の承諾を得る際に,顧問契約を解除しておくのが相当である」としていました。

    これに対して、日弁連は、会社の顧問弁護士は独立した業務をしており、「使用人ではなく」、顧問弁護士が当該会社の監査役を兼任することは旧商法276条(現会社法335条2項)には抵触しない、ただし兼任することの妥当性については慎重に配慮せよとの立場をとっています。日弁連の見解は,顧問弁護士は独立した業務であり,会社ないし経営陣に対する従属関係にはないことを基準として考えています。なお、日弁連の見解では、以下の弁護士は、「使用人」に該当するとしています。
    ✓自社に所属して一従業員として働く弁護士(企業内弁護士)
    ✓専属して自社の法律事務のみを行い、他の依頼者からの依頼を受けない弁護士

    また、社団法人日本監査役協会監査法規委員会は,会社法が顧問弁護士の社外監査役就任を特に制限していないことを前提にして,後述の独立性基準を満たしておればその選任に問題はないとのスタンスを示しています(「独立役員に関するQ&A-独立役員届出書提出にあたっての監査役の実務対応-」平成22年2月26日)。

    以上の議論は、経営陣から独立した立場で取締役等の業務執行に対する監督を行うという社外取締役についても同様に妥当しますので、顧問弁護士を社外取締役に選任することも可能である、ということになります。
    ただし、実務上は、従前の法務省民事局4課の回答を考慮して、顧問弁護士を社外取締役に選任する場合には、当該顧問弁護士との間の顧問契約を解除しておくのが相当であるといえます。

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    04 上場会社における留意事項(独立役員該当性の問題(独立性の判断基準))

    次に、上場会社においては、社外取締役の独立性については、会社法の社外取締役の要件以外に、後述する東証の独立性基準に抵触していないかを検討する必要があります。
    東京証券取引所(以下「東証」という)では、一般株主保護の観点から、上場会社に対して、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます。)を1名以上確保することを企業行動規範の「遵守すべき事項」として規定しています(有価証券上場規程第436条の2)。
    その上で、東証は、「上場管理等に関するガイドライン」において、東証が一般株主と利益相反の生じるおそれがあると判断する場合の判断要素(独立性基準)(「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」(2022年9月・2024年1月改訂版))を規定しており、独立性基準に抵触する場合には、その者を独立役員として届け出ることができません。

    また、コーポレートガバナンス・コードでは、「取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべきである」(原則4-9)としており、この原則を実施(エクスプレイン)する上場会社は、独立性基準を踏まえて、自社(グループ)の独立性判断基準を策定することになります。
    以上のとおり、東証の独立性基準は上場会社に一律に適用されるともに、上場会社が独自に策定している独立性判断基準は各社によって内容が異なることになります。

    05 顧問弁護士と独立性基準の関係

    顧問弁護士または顧問弁護士が所属する法律事務所の弁護士(以下両者を併せて「顧問弁護士等」といいます。)を独立役員とする場合には、東証の独立性基準のうち「C. 上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)」という基準への抵触の有無が問題となります。
    前記「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」では、「上記Cに該当し得る場合としては、顧問弁護士等が考えられますが、顧問弁護士等であれば必ず「多額の金銭その他の財産を得ている」者に該当するというわけではありません。」とのスタンスを示しており、顧問弁護士等が直ちに上記Cに該当するものではないとしておりますので、顧問弁護士等を独立役員に選任することも可能です。
    また、東証の独立性基準は、「多額の金銭その他の財産」に該当するか否かについては、具体的基準を明らかにせず、上場会社が判断するものとしております。

    06 「多額」の定量基準

    上場会社がこれを自社で判断するに当たっては、独立性判断基準を策定・開示している他社実例を参考にすることが推奨されます。
    「多額の金銭その他の財産」に該当するかどうかの基準を策定・開示している例としては、以下のような定量基準を示すものが一般的です(「証券代行ニュース No.156」三菱UFJ信託銀行を参照)。
    ✓1000万円以上(超)
    ✓(個人の場合)年間1,000万円以上、(団体の場合)総収入の2%以上
    ✓(個人の場合)3事業年度の平均で年間1,000万円以上、
    (団体の場合)3事業年度の平均で総収入の2%以上

    以上のような独立性基準の策定・開示例を踏まえますと顧問弁護士等を独立役員に選任する場合には、当該弁護士が所属する法律事務所への弁護士報酬の支払総額が上記の定量基準を超えていないことを確認しておくことが必要です。

    07 顧問弁護士と社外取締役についてのまとめ

    以上のとおり、会社の実情に通じた顧問弁護士や顧問弁護士が所属する法律事務所の弁護士に社外取締役や社外監査役を依頼したいというニーズがある場合、上場会社においては独立役員として独立性基準に抵触しないかどうかを検討する必要があります。そして、抵触の有無は、上述した上場会社が策定・開示している独立性判断基準の定量基準を参考に、顧問弁護士等が所属する法律事務所に支払っている弁護士報酬の額が、前述した「多額」の定量基準の範囲内かどうかで判断して行くということになります。
    そして、この定量基準に抵触するような場合には、顧問弁護士が所属する法律事務所でない他の弁護士を社外役員として選任するということになります。
    至高法律事務所では、上場に関するアドバイス等を多数行っており、また、所属する複数の弁護士が上場会社の独立役員に就任しておりますので、独立役員の選任に関するご相談についても対応しております。

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