中小企業こそ顧問弁護士が必要な理由企業法務部経験のある弁護士が解説

1 はじめに

本年より至高法律事務所に入所いたしました、弁護士の髙島です。

前職の事業会社の法務部では契約書審査、社内規程の整備、取引先との契約交渉、社内からの法律相談対応などに携わってきました。

その経験を通じて強く実感したのは、契約書・法的リスクへの向き合い方が、企業の交渉力や将来のリスクに大きく影響するということです。

本記事では中小企業の経営者の皆さまに向けて、なぜ顧問弁護士の活用が重要なのか、また、どのような法律事務所を顧問先として選ぶべきなのかを解説します。

2 法務機能が十分でない会社は、契約交渉で不利になることがある

取引先から契約書のひな形が送られてきたとき、内容を十分に確認せず、形式的な文言修正だけを行って返してしまうことがあるとします。

もちろん、日々の取引を円滑に進めるためには、契約書の確認に必要以上の時間をかけられない場面もあるでしょう。特に、取引先との関係性や納期、営業上の事情を考えそのような対応をされることもあると思います。

しかし、契約書には、代金の支払条件、契約解除、損害賠償、秘密保持、知的財産権、競業避止、反社会的勢力排除条項など、将来のトラブル時に大きな意味を持つ条項が数多く含まれています。

大企業の法務部門は、こうした条項を日常的に確認しています。そのため、相手方の提示した契約書のどこにリスクがあるのか、自社としてどこまで譲れるのか、どの条項は修正を求めるべきなのかを意識しながら交渉を進めています。

一方で、法務部門がない企業では、事業上の力関係だけでなく、契約書を読み解く体制の差によって、結果として不利な条件を受け入れてしまうことがあります。

例えば、新規取引の検討段階で、図面、顧客情報、価格表、製造ノウハウなどを相手方に共有することもあります。このとき、秘密保持契約の対象情報や利用目的、返還・廃棄義務が曖昧なままだと、取引が成立しなかった後に、情報利用を止めにくくなることがあります。

契約書上の不利な条件は、契約締結直後には表面化しないことも少なくありません。数年後、場合によっては5年10年経ってから、取引先との紛争や損害賠償請求の場面で初めて大きな問題となることがあります。

つまり、契約書の確認を後回しにすることは、将来の紛争リスクを少しずつ積み上げてしまうことにもつながるのです。

私自身、企業法務部に在籍していた際、法務部門のない企業との契約交渉を経験する機会がありました。その中で、こちらが提示した修正案について、相手方からほとんど反論がない、あるいは反論があっても法的なポイントから外れているという場面もありました。

その結果、相手方にとって不利な条件のまま契約が成立してしまうこともあり、企業法務部の立場から見ても、法務体制の差が契約条件に影響することを実感しました。

3 法務部門の内製化は容易ではない

では、社内に法務部や法務担当者を置けば、すべて解決するのでしょうか。

まず、法務人材は専門性が高く、採用時に能力を見極めることが容易ではありません。

経験豊富な人材を採用できたとしても、その人材が自社の事業内容や業界特有の商慣習に合った法務体制を構築するには、一定の時間がかかります。逆に、若手人材を採用する場合には、社内に教育体制や相談先がないまま、手探りで対応せざるを得ないこともあります。

さらに、法務担当者が1名だけの場合、その担当者に知識や経験が集中してしまい、退職や異動の際にノウハウが社内に残りにくいという問題もあります。

このように、法務部門の内製化には、採用、育成、定着、費用の面で高いハードルがあります。

昨今では、生成AIによる契約書レビューや法務相談も可能となっており、これらのサービスを利用すれば法務部門は不要なのではないか、との発想もあるかもしれません。
 ですが、AIの回答には矛盾や誤解が含まれる可能性もあり、AIの判断を適切に検証・審査する専門家の必要性は、現代においても変わるものではありません。

そこで有力な選択肢となるのが、顧問弁護士の活用です。

4 顧問弁護士は「外部法務部」として活用できる

法律事務所と顧問契約を締結しておけば、契約書の作成・レビューだけでなく、日々の業務で生じる法律相談、就業規則や社内規程の整備、株主総会・取締役会の運営、労務トラブル、取引先との紛争予防などについて、継続的に相談することができます。

例えば、次のような相談が考えられます。

・取引先から送られてきた契約書について、自社に不利な条項がないか確認したい

・新規事業を始めるにあたり、法的規制に抵触しないか確認したい

・従業員の勤務態度に問題があり、注意指導や懲戒処分を検討したい

・株主総会や取締役会の手続を適切に進めたい

・就業規則や社内規程を現在の実態に合わせて見直したい

顧問弁護士がいることで、こうした問題について、早い段階で相談することができます。

特に重要なのは、顧問弁護士が、会社の事業内容、取引先との関係、社内体制、過去の相談経緯を把握したうえで助言できるという点です。

スポット相談の場合、まず事情説明から始める必要があります。しかし、顧問契約があれば、会社の基本的な事情を踏まえたうえで、より迅速かつ実情に即した対応を取りやすくなります。

例えば、勤務態度に問題がある従業員に対して、感情的に退職を促したり、十分な記録を残さないまま懲戒処分を行ったりすると、後に「不当解雇」「退職強要」と主張されることがあります。

このような場合でも、早い段階で顧問弁護士に相談しておけば、注意指導書の作成、面談記録の残し方、配置転換や懲戒処分の可否、退職勧奨を行う場合の注意点などを、段階的に検討することができます。

また、取引先とのトラブルについても、初期対応が重要です。

相手方から強い文面の通知書が届いた場合、すぐに反論すべきなのか、まず事実関係を整理すべきなのか、証拠をどのように保全すべきなのか、今後の取引継続を前提に交渉すべきなのか。これらは、事案ごとに慎重な判断が必要です。

法務トラブルは、問題が大きくなってから相談するよりも、早い段階で相談した方が、選択肢が多く残されていることが少なくありません。

顧問弁護士は、トラブルが起きた後に対応するだけでなく、トラブルを起こさないための予防策を一緒に考える存在といえます。

5 顧問弁護士を選ぶ際に重視すべき3つの視点

顧問弁護士を選ぶ際には、以下の3点を踏まえ、「実際の企業活動の中でどのような対応ができるか」を確認することが重要です。

① 紛争対応まで見据えた助言ができること

取引先との紛争が生じた場合には、「裁判になったらどのように判断される可能性があるか」「どの証拠を残しておくべきか」「今の段階でどのような交渉をすべきか」という視点が重要になります。

例えば、契約書上は納期遅延の場合の責任が明確に定められていなかったとしても、実際のやり取り、メール、発注書、納品書、検収記録などから、どのような主張が可能かを検討する必要があります。

また、相手方との交渉を続けるべきか、内容証明郵便を送付すべきか、仮差押えなどの保全手続を検討すべきか、訴訟や調停に進むべきかについても、事案ごとの判断が必要です。

訴訟は、できれば避けたい手続だと感じる方も多いと思います。

しかし、事案によっては、交渉を長引かせるよりも、裁判所の手続を利用した方が早期かつ合理的な解決につながることもあります。

大切なのは、「裁判をするかしないか」という二択ではなく、裁判手続を含めた複数の選択肢を理解したうえで、自社にとって最も合理的な解決方法を選ぶことです。

当事務所では、日頃から訴訟案件や紛争案件に取り組んでおり、平時の契約書レビューや法律相談においても、将来の紛争リスクを踏まえた助言を行うことを重視しています。

② 緊急時に迅速な初動対応ができること

企業活動では、予期しないトラブルが突然発生することがあります。

従業員の不祥事、顧客対応、SNS上の炎上、情報漏えい、取引先との重大な紛争、労務トラブルなどでは、初動対応を誤ると、法的責任だけでなく、会社の社会的信用や評判にも大きな影響が及ぶことがあります。

例えば、従業員による不適切なSNS投稿が発覚した場合、会社としてどの範囲で事実確認を行うべきか、本人へのヒアリングをどのように実施すべきか、取引先や顧客に説明すべきか、社外に公表する必要があるかなど、短時間で多くの判断を迫られます。

また、顧客情報の漏えいが疑われる場合には、事実確認、証拠保全、関係者へのヒアリング、被害拡大防止、本人への通知、関係機関への報告、再発防止策の検討などを、状況に応じて進める必要があります。

このような場面では、法的責任の有無だけでなく、説明の順番や表現、関係者への配慮、社内外に与える影響を踏まえた対応が重要になります。

特に近年は、コンプライアンスや説明責任に対する社会的な目線が厳しくなっています。問題が発生したこと自体以上に、発生後の対応が不適切であることによって、会社の信用が大きく損なわれることもあります。

顧問弁護士が日頃から会社の事業内容や社内体制を把握していれば、緊急時にも状況をすばやく理解し、必要な対応を提案しやすくなります。

当事務所では、企業の緊急トラブル対応についても、事案の性質に応じて、法的観点と実務的観点の双方からサポートいたします。

③ 必要に応じて外部専門家と連携できること

法律問題は多岐にわたります。

企業法務、労務、知的財産、不動産、倒産・事業再生、M&A、行政対応、税務、会計、許認可など、分野ごとに必要となる知識や経験は異なります。

一つの法律事務所が、すべての法律分野について常に最高水準の専門性を有しているとは限りません。

そのため、顧問弁護士には、自ら対応できる範囲を見極めたうえで、必要に応じて他の弁護士や専門家と連携できる体制が求められます。

例えば、知的財産権が問題となる契約では、特許や商標に詳しい専門家との連携が必要になることがあります。税務上の影響が大きいスキームでは、税理士との協議が重要になります。不動産、建築、医療、IT、許認可などの分野でも、事案に応じた専門的知見が必要となります。

中小企業にとっては、自社で各分野の専門家を一から探し、適切な相談先を見極めること自体が大きな負担となる場合があります。

そのようなとき、顧問弁護士が窓口となり、必要に応じて外部専門家と連携できれば、会社としても安心して対応を進めることができます。

当事務所は、弁護士会での活動等を通じて、各分野に知見を有する弁護士や専門家との連携を大切にしています。

自社だけで抱え込むのではなく、必要な専門性を組み合わせながら、依頼者にとって負担の少ない解決を目指します。

6 中小企業にとって、顧問弁護士は経営上のパートナー

顧問弁護士というと、「トラブルが起きたときに相談する相手」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、紛争や緊急トラブルが発生した際に弁護士が対応することは重要です。

しかし、企業にとって本当に重要なのは、トラブルが深刻化する前にリスクを把握し、予防し、必要に応じて早期に手を打つことです。

顧問弁護士は、会社の守りを固める存在であると同時に、経営判断を支えるパートナーでもあります。

新しい取引を始めるとき、新規事業を検討するとき、採用を強化するとき、社内制度を整備するとき、事業承継や組織再編を考えるときなど、企業の成長過程ではさまざまな法的課題が生じます。

その都度、法的リスクを整理し、経営判断に必要な選択肢を示すことも、顧問弁護士の重要な役割です。

7 さいごに

企業が抱える法的課題は多岐にわたります。しかし、早い段階で相談いただくことで、深刻な紛争を防ぎ、より良い解決策を選択できる可能性が高まります。

当事務所は、企業の健全な経営とさらなる発展を支えるパートナーとして、日々研鑽を重ねております。

顧問弁護士の活用をご検討中の経営者の皆さまは、ぜひ一度、至高法律事務所へご相談ください。

Last Updated on 2026年7月1日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
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社会の課題に対し、私どもは「世のため、人のために尽くすことが、人間として最高の行為である」という理念にもとづき、これまで培ってきた法的技術やノウハウを駆使した創造的な解決策を提供することでこれを解決し、持続可能な人類・社会の進歩発展に貢献するという経営理念の実現に向けた挑戦を日々続けております。そして、「至高」という事務所名に込めた「社会正義の実現」、「社会の最大の幸福の実現」、「持続可能な人類社会の実現」に貢献するという高い志をもって努力をし続けて参ります。

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