内部通報窓口

内部通報制度とは

内部通報制度とは、企業において、現に発生し、又は発生するおそれのある法令違反、コンプライアンス違反、不正行為などに関する事実について、企業内部からの情報提供(通報)を受け、必要に応じて企業が調査を行い、適切な是正を行うことで、企業の自浄作用を促す制度です。

法令等による内部通報制度の要請

内部通報制度は以下の法令等から要請される制度です。

公益通報者保護法

令和2年6月に公益通報者保護法が改正され、令和4年6月1日から施行されました。

改正法により、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者において、公益通報を受け、公益通報に係る通報対象事実を調査し、その是正に必要な措置を取る業務に従事する者(「公益通報対応業務従事者」や「従事者」と呼ばれます。)を定めること、及び公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備や措置をとることが義務付けられました(公益通報者保護法第11条1項、2項)。

なお、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者においても、努力義務とされています(公益通報者保護法第11条3項)。

会社法

会社法上、取締役会に対して、「会社及びグループ会社の業務の適性さを確保するための体制を整備する義務」(会社法第362条4項6号)が要請され、さらに損失の危険の管理体制の整備義務(会社法施行規則100条1項2号)まで要請されています。

内部通報制度の対象となる法令違反、コンプライアンス違反、不正行為のいずれもが「損失の危険」であり、「業務の適性さの確保」に繋がることは明らかです。

このように、会社法においても内部通報制度の充実が取締役会に要請されているものといえます。

ハラスメント防止法

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(いわゆる、パワハラ防止法です)が改正され、事業主は、パワーハラスメントを防止するために、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を講じることが義務付けられました。

この雇用管理上必要な措置について、厚生労働省の定める指針(令和2年厚生労働省告示第5号)では、相談窓口の設置と相談窓口の周知等、相談窓口の担当者が相談に対して適切に対応できるようにすることなどが示されています。

また、男女雇用機会均等法において、事業者にはセクシュアルハラスメントの防止のための体制整備が義務付けられており、パワハラ防止法と同じように相談窓口の設置等が求められています。

これらのハラスメント防止法における相談窓口の設置や相談窓口の担当者による対応は、まさに内部通報によって実現されるものといえます。すなわち、ハラスメント防止法からも内部通報の整備が要請されているものといえます。

コーポレートガバナンスコード

東京証券取引所が公開しているコーポレートガバナンスコード(2021年6月11日改定)の原則2-5において「上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法また は不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現す る責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。」ことが示されています。

このように、内部通報制度の整備は、公益通報者保護法をはじめ、会社法やコーポレートガバナンスコードなど様々な法令等から要請されており、内部通報制度は会社に必要不可欠の制度といえます。

公益通報者保護法の改正の影響

上記したように公益通報者保護法は令和2年に改正があり、事業者に公益通報対応業務従事者を定めることを義務付けたことの他にも重要な改正がありました。

それが、通報者の秘密が罰則をもって守られることになったということです。すなわち、現に公益通報対応業務従事者である者または過去に公益通報対応業務従事者であった者が、正当な理由なく、公益通報対応業務の中で知り得た事項であって公益通報者を特定させる事項を漏らした場合に、30万円以下の罰金が科せられることになりました。

また、公益通報者保護法で守られる通報者の範囲についても、退職後1年以内の役員や職員に拡大されたという点も重要です。

内部通報制度の整備において重要なこと

このように、公益通報者保護法の改正によって、内部通報制度を整備するにあたって、通報者の秘密を保護をはかることが重要になりました。

内部通報の処理の中で通報者の秘密の保護をはかるというのは、単に内部通報規程に情報の漏えいを禁止する条項を設けるというだけでは足りません。

内部通報は、通報の受付→調査実施→事実認定→是正措置→通報者への報告といった流れで動いていきます。この流れの全ての段階において通報者の秘密が保護される仕組みやルールの整備が重要となります。

ただ、通報された事実について調査をする段階になると、従業員や役員その他協力者からの資料の提供を受けたり、ヒアリングを行う等が必要となります。この調査の中で、「通報者が特定されてしまう恐れ」というものは避けられません。

そのため、調査を進める前に通報者にリスクへ説明を行い、通報者にリスクを理解してもらった上で、調査を進めていくことが大切です。そのためには、通報を受け付ける段階で、窓口担当者から通報者に対して、調査を進める中で特定される可能性、それでも公益のために協力をしてもらいたことを説明し、通報者に納得、了解してもらうことが必要です。

また、通報者から理解を得るためにも、会社として通報者に不利益を与えることを許さないことを公表したり、通報したことに対して不利益を与える者に対しては懲戒を行うことなど、通報者が安心できる仕組み作りも重要です。

内部通報規程等

公益通報保護法の改正を受け、消費者庁では、内部通報制度の充実に向けて、「公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」を公表しています。また、内部通報の規程例や、参考となる書式も公表されています。

しかし、上記のとおり、単に規程を定めるだけでは内部通報の整備としては不十分です。

会社が定めた内部通報規程がその会社の組織に合致しているのか、そして、実際に、受付、調査、是正、通知という内部通報の処理を行うという行動が取れるようになっているかが重要です。

弊事務所では内部通報の窓口業務での経験を活かし、規程のカスタマイズから、実際の内部通報への対応に関する指導等、内部通報制度の整備に向けたサービスを提供しております。

 

Last Updated on 2024年4月3日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
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