製造業経営者のためのクレーム対応について弁護士が解説

弁護士に相談すべき製造業におけるクレームとは

製造業を営む企業にとって、クレームは避けて通れない問題です。品質管理を徹底していても、使用環境や消費者の取り扱い方、部品供給元の不具合など、さまざまな要因でクレームが発生します。しかし、すべてのクレームに対して弁護士に相談すべきというわけではありません。ここでは、特に弁護士への相談を強くおすすめするクレームの特徴をご紹介します。

(1) 人の命や重大な財産に関わるクレーム

製品の欠陥が原因で事故や怪我、火災などが発生した場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。このような場合、製造物責任法(PL法)が適用され、企業は「過失」がなくても損害を賠償しなければならないことがあります。仮に製品自体に欠陥がなかったとしても、被害者側との認識のズレや証拠不足から不利な立場に立たされることもあります。早期に弁護士に相談し、適切な初動を取ることでリスクを大きく下げることができます。

(2) 広範囲の製品に問題があるかもしれないクレーム

「1件のクレームが、実は数百個の製品に共通する問題だった」といった事例は、過去にも多数あります。たとえば、ある部品に不具合が見つかった場合、それがすべてのロットに共通する仕様ミスであれば、回収(リコール)が必要になる可能性も。放置すれば、企業の信用失墜や行政指導につながることもあります。被害拡大を防ぐためにも、クレームの背後にある全体像を法的視点で検討する必要があります。

(3) 原因が複雑すぎて分からないクレーム(自社製品に過失があるのか不明)

原因が他社製品との組み合わせ、使い方、輸送中の破損などに起因する可能性もあるケースでは、責任の所在が曖昧です。自社に責任がないのに対応を誤ると、「認めた」と捉えられてしまう危険性もあります。このようなときは、法的リスクと技術的リスクを総合的に分析し、慎重に対応を進める必要があるため、第三者である弁護士の介入が有効です。

(4) サプライチェーン全体が絡むクレーム

たとえば、下請け業者からの部品不良が原因で完成品に不具合が生じた場合、元請企業としては発注先と消費者の両方との調整が必要です。このような場面では、下請法(下請代金支払遅延等防止法)との兼ね合いも出てきます。法律関係者の関与により、交渉や補償のバランスを図ることが重要です。

(5) 会社の信用や事業に悪影響が出かねないクレーム

インターネットやSNSの普及により、1件のクレームが瞬時に拡散し、企業イメージに打撃を与えるリスクも増しています。対応を誤ると、「顧客対応が悪い会社」という印象を植え付けられてしまい、取引先や株主からの信頼も揺らぎます。このような影響を最小限に抑えるには、冷静かつ戦略的な対応が必要です。

(6) 明らかに「悪質なクレーマー」からの不当な要求

中には、過大な金銭を要求してくる、あるいは脅迫的な言動を繰り返すなど、悪質なクレーマーも存在します。このような相手に対しては、毅然とした態度で臨むとともに、必要に応じて法的措置(例:警察への相談、損害賠償請求)も視野に入れる必要があります。弁護士が前面に出ることで、相手も不当な要求を控える傾向にあります。

製造業がクレーム対応を弁護士に任せるメリット

クレームが発生したとき、「まずは自社で対応しよう」と考える企業は少なくありません。しかし、事態が複雑化すればするほど、社内だけでの解決は困難になります。ここでは、製造業が弁護士にクレーム対応を任せることで得られる主なメリットを5つご紹介します。

(1) 法的リスクを最小限に抑え、余計な出費を防ぐ

製造物責任法(PL法)や下請法など、製造業に関連する法律は多岐にわたります。知らずに対応すると、本来負う必要のない責任まで認めてしまったり、違法な対応をしてしまったりするおそれもあります。たとえば、「とりあえず謝罪と返金で済ませたつもりが、損害賠償請求に発展した」というケースもあります。弁護士が関与することで、初動から法的な正当性を確保でき、不要な出費や訴訟リスクを回避できます。

(2) 弁護士が交渉することでスムーズな解決へ

クレーム対応は相手とのコミュニケーションが非常に重要です。感情的なやりとりになりやすく、社員が対応することでストレスやトラブルが拡大することもあります。弁護士が間に入れば、冷静で客観的な立場から交渉が行え、問題を迅速かつ円満に解決しやすくなります。また、弁護士が関与しているというだけで、相手が過剰な要求を控える場合もあります。

(3) 正確な証拠固め

問題の本質を明らかにするには、適切な証拠の収集と保存が欠かせません。使用状況のヒアリング、製造工程の検証、出荷記録、契約書や取引履歴など、多くの資料が関係します。弁護士が主導すれば、訴訟を想定した証拠固めが可能となり、いざというときに有利な立場を築けます。

(4) 会社の信頼とブランドイメージを守る

クレーム対応の仕方は、企業の姿勢を外部に示す重要な場面です。適切な対応ができれば、「誠実な会社だ」という評価にもつながります。一方で、対応が後手に回ったり、法的に問題のある対処をしたりしてしまうと、無用な信頼失墜につながりかねません。弁護士が関わることで、企業として一貫性のあるメッセージを打ち出し、ブランド価値を維持・向上させることができます。

(5) クレームを「学びに変える」法的アドバイス

クレームは「危機」であると同時に、企業が成長するチャンスでもあります。弁護士は、再発防止策の策定や契約書の見直し、内部フローの改善提案など、法的観点から建設的なアドバイスを行います。たとえば、過去にあった「部品供給元との契約に保証条項がなかったために損害を一方的に被った」というケースでは、契約書を見直すことで将来のリスクを大幅に軽減することができました。

弁護士に依頼した後のクレーム解決までの具体的な流れ

「クレーム対応を弁護士に依頼すると、実際にどう進むのか分からない」という声をよく耳にします。そこで、ここでは弁護士がクレーム対応を受任した後、どのような流れで問題を解決へと導くのかを、実際の対応プロセスに沿ってご紹介します。

(1) 徹底的な情報共有と初期分析

まず行うのは、クレームの内容に関する詳細な情報収集です。どのような製品で、いつ・どこで・どのような問題が発生したのか、誰がどのような要求をしてきているのかなど、関係者からヒアリングを行い、関連書類(契約書、製造記録、検査報告書、顧客対応履歴など)を徹底的に確認します。

弁護士はこの段階で、事案の法的リスクや交渉の余地を分析し、企業側に「想定される展開」と「とるべき方針案」を提示します。初動対応が肝心ですので、スピーディーかつ慎重に動きます。

(2) お客様(クレーマー)への接触と証拠の検証

次に、相手方との接触を行います。ここでのポイントは、相手方の主張や感情を丁寧に受け止めつつも、事実に基づいた主張を構築していくことです。

仮に相手が感情的であっても、弁護士が介入することで冷静な話し合いの土台を作ることができます。また、クレームの原因を検証するために、製品の返送依頼や実地調査なども実施することがあります。このとき、誤解や誇張を防ぐために証拠を中立的に整理し、将来的な訴訟リスクにも備えます。

(3) 交渉、和解、訴訟対応

情報整理が終わったら、本格的な交渉に入ります。金銭の支払いで解決するのか、修理・交換対応で済むのか、再発防止策の説明が必要かなど、相手の要求と企業の対応可能な範囲をすり合わせながら、納得解を目指します。

多くのケースでは交渉段階で和解に至りますが、万が一、訴訟に発展した場合でも、すでに証拠や主張の準備が整っていれば、有利な立場で争うことができます。もちろん、裁判以外のADR(裁判外紛争解決手続)も検討に入れ、負担を抑える方策も併せて提示します。

(4) 解決後の予防法務

クレームが収束した後も、弁護士の役割は終わりません。今回の事案から得た教訓をもとに、契約書やマニュアルの見直し、社内教育の実施、チェック体制の整備など、同じような問題が再発しないようにアドバイスを行います。

たとえば、過去の対応事例では、「取扱説明書に記載されていなかった使用上の注意点」がクレームの原因だったため、以降すべての製品マニュアルを見直したことで、同種のクレームがゼロになったという成果もありました。

このように、単なる「火消し」に終わらせず、企業のリスクマネジメントの一環として、クレーム対応を位置づけていくことが弁護士の使命でもあります。

当事務所のサポート内容

当事務所では、製造業の企業様から寄せられるクレーム対応に関するご相談に対して、事案ごとに最適なリーガルサポートを提供しています。以下に、当事務所の具体的な対応内容と、過去に取り扱った代表的な事例をご紹介します。

クレーム対応におけるリーガルサポートの全体像

まず、弁護士による初回相談では、製品の性質やクレームの内容、発生の背景、相手方の主張やこれまでの社内対応の経緯などを丁寧にヒアリングいたします。この段階で「緊急性の有無」や「社内外への影響度」、「法的リスクの程度」を総合的に分析し、企業側に最も適切な対応策をご提案します。

その後、以下のような対応を必要に応じて実施します。

  • 相手方との交渉・和解案の提示
  • リスク評価と対応戦略の策定
  • 必要書類(報告書、回答書、通知書など)の作成・修正
  • 製造元・仕入先・販売業者との連携調整
  • 必要に応じて裁判・調停・ADRの代理
  • 解決後の再発防止のためのアドバイスや社内体制の整備支援

実際の解決事例

以下は、実際に当事務所が対応した事例の一部です。

ケース①:小型家電メーカーに対するPL法を巡る損害賠償請求

クレーム内容は「使用中に家電が発火し、カーテンが焼けた」との主張。被害者側はSNSで拡散を図り、対応を誤ると企業イメージが大きく傷つく懸念がありました。当事務所では、製品の使用状況と保管状況を含めて調査を行い、証拠保全と原因分析をサポート。結果として、当該製品に欠陥がないことを立証し、弁護士が交渉窓口となることで拡散を抑え、損害賠償請求を回避しました。

ケース②:下請業者からの部品供給不良による完成品リコール対応

部品の一部に不良が発覚し、大手量販店からの回収要請が入りました。原因は下請業者の工程ミスでありましたが、契約書には責任分界点が明記されておらず、交渉が難航。弁護士が両者の契約解釈と交渉をリードし、下請業者から費用の一部補償を得る形での和解に至りました。同時に契約書の見直しを行い、今後のリスクを最小化しました。

予防法務としてのアドバイザリー契約も対応可能

突発的なクレーム対応だけでなく、日常的なリスク管理を行いたい企業様には、継続的なリーガルアドバイザリー契約もご案内しています。これにより、社内の品質管理・契約審査・従業員教育といった多方面にわたる支援を受けることが可能です。

最後に:クレーム対応を「守り」から「攻め」の企業戦略へ

製造業にとってクレームは避けて通れない課題ですが、対応の仕方によっては企業価値を高めるチャンスにもなり得ます。適切な法的対応ができれば、トラブルの早期収束はもちろん、将来の予防法務にもつながります。

「クレーム対応を、もう一人で悩まないでください。」

当事務所では、豊富な製造業支援実績をもとに、御社に寄り添った法的支援を行っています。
まずはお気軽に、無料相談をご利用ください。

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Last Updated on 2025年10月27日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
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