モンスターペアレントへの学校側の対応について弁護士が解説

0.はじめに

「毎日のように同じ保護者から電話が来る」「どこまで要求に応じればいいのか分からない」「教員が疲弊してしまっている」——そんな不安を抱えてこのページをご覧の学校法人・幼稚園・保育園のご担当者も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、学校側の顧問弁護士として保護者トラブルの相談を受けている立場から、モンスターペアレントの特徴、学校の法的責任、具体的な対応策、弁護士が介入できる場面、そして予防・体制づくりのポイントまで整理してお伝えします。

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モンスターペアレントとは何か ― 特徴とトラブルの広がり

モンスターペアレントとは、教育現場に対して、自己中心的で理不尽な要求やクレームを繰り返す保護者のことを指します。

典型的には、次のような言動が見られます。

  • 自分の子どもだけ特別扱いするよう強く求める
    例:「日焼けすると困るので体育の授業は全て休ませてほしい」「うちの子だけ窓際の席にしないでほしい」など。
  • 暴言・長時間の電話・頻繁な来校など、教職員の業務を妨げるレベルのクレームを繰り返す
  • 客観的事実と異なる内容を主張し続け、説明をしても納得しない
  • 本来は家庭で担うべき役割(送迎や生活管理など)を学校に過度に求める

どのケースにも共通するのは、「子どものため」という名目でありながら、学校全体の運営や他の児童生徒への影響を顧みない点です。

近年は、クレームの矛先が学校だけでなく、教育委員会や自治体、場合によってはSNSや口コミサイトにまで広がることもあります。発信された情報が一方的な内容であっても、学校側は反論しづらく、炎上や風評被害につながる可能性があります。

一見すると一人の保護者とのトラブルでも、口コミやSNSを通じて他の保護者にも波及し、学校全体への不信感に変わってしまうことがあります。

保護者トラブルにおける学校の法的責任とは

保護者から強いクレームを受けたとき、本当に学校に責任があるのか、どこまで応じなければならないのかが分からず、対応に迷う学校は少なくありません。

ここで重要になるのが、安全配慮義務と管理監督責任という考え方です(いずれも、子どもの安全を守るために必要な注意や見守りを行う義務のことです)。

学校の安全配慮義務と限界

学校には、児童生徒が安全に学校生活を送れるよう配慮する法的義務(安全配慮義務=事故が起きないよう注意する義務)があると考えられており、授業中の事故や部活動中の怪我、いじめ・ハラスメントなどの場面で問題になります。

もっとも、学校が子どもの生活の全てを24時間見守ることはできませんし、全てのリスクを完全に排除することも不可能です。そのため裁判所は、事故やトラブルが起きたとき、学校として合理的な範囲で必要な措置を講じていたかどうかを基準に責任の有無を判断しています。

モンスターペアレントに関連する裁判例の中には、保護者の言動が行き過ぎていたため、学校側や教員が保護者に損害賠償を求めた事案もあります。一方で、学校事故に関する裁判例では、学校の監督が適切であったと認められ、学校側の責任が否定されたケースも少なくありません。

事故が起きた=学校が必ず責任を負うというわけではなく、個別事情を踏まえた丁寧な検討が必要です。だからこそ、学校としては安全確保のためにどのような対応を行ったのか、保護者からの相談にどう対応したのかを、日頃から記録に残しておくことが重要です。

モンスターペアレントへの対応策 ― 現場の限界と線引き

現場教員・校長任せにしない

多くの学校では、最初の相談窓口が担任の先生や学年主任の先生になります。しかし、モンスターペアレントへの対応を特定の教員に任せきりにすると、授業や生徒指導に支障が出たり、メンタル不調や休職につながったりするおそれがあります。

そのため、学校としては次のような組織的な対応を意識することが大切です。

  • 相談窓口となる管理職・事務職員などを明確にし、担任だけで抱え込ませない
  • 面談や電話対応は、できる限り複数名で行う
  • 電話や面談の内容を対応記録として残し、必要に応じて録音も検討する

録音については、当事者として自分が参加している会話を録音する限り、一般的には違法とはされませんが、個人情報の管理や保管方法には十分な配慮が必要です。

どこまで対応し、どこでお断りするか

モンスターペアレントとの対応で難しいのは、「いつまで誠実に話を聞き続けるべきか」「どこからはきちんと線を引くべきか」という点です。

判断の目安としては、

  1. 子どもの安全・健康に関する正当な不安に基づいているか
  2. 学校側にも一定の改善の余地があるか
  3. 要求内容が、学校の通常業務の範囲を大きく超えていないか
  4. 要求の伝え方が、暴言・威圧・執拗な連絡など社会通念上許容される範囲を超えていないか

といった観点が挙げられます。

最初の段階では、誤解や行き違いが原因であることも多いため、丁寧に事情を伺い、事実確認を行ったうえで説明することが重要です。しかし、同じ主張を繰り返すだけであったり、長時間の電話や頻繁な来校で業務が妨げられたりするようであれば、「これ以上は同じご要望にはお応えできません」といった形で、学校としての最終的な方針を明示する必要があります。

その際、方針を文書にまとめ、校長・理事会等とも共有しておくと、教職員が自信を持って対応しやすくなります。

弁護士ができる支援と介入のタイミング

弁護士に相談するのは最後の手段とお考えの学校も多いのですが、実際には、トラブルが大きくなる前の段階から関与する方が、学校側の負担もリスクも小さくて済みます。

顧問弁護士がいることでできること

学校側に詳しい弁護士がつくと、例えば次のような支援が可能です。

  • 事実関係と法的リスクの整理
  • 保護者への回答書・説明文の作成支援
  • 弁護士名での警告書送付や代理交渉
  • 万一訴訟になった場面での見通しと準備

どこまで認めるか、どの表現は避けるべきかといった細かなポイントは、現場だけで判断し続けると大きなストレスになります。外部の専門家が一緒に考えることで、教職員の心理的負担は大きく軽減されます。

弁護士に相談すべきトラブルの特徴

次のような兆候がある場合は、「まだそこまで大事ではない」と思わず、早めに弁護士への相談を検討されることをおすすめします。

  • 暴言・暴力・執拗な連絡など、刑事事件・業務妨害に発展しかねない言動がある
  • いじめ・体罰・ハラスメント、学校事故、学費返還請求など、専門的な判断が必要な論点が含まれている
  • 教育委員会や監督官庁への申立て、SNSやメディアでの発信が予想される
  • 担当教員や事務職員がすでに精神的に限界に近づいている

「相談したからといって必ず訴訟になる」というわけではなく、むしろ訴訟を避けるために弁護士が入るケースの方が多い、というのが実感です。

重要なのは学校としての予防措置と体制づくり

モンスターペアレント対応で何より大切なのは、「問題が起きた後に個別対応でバタバタする」のではなく、「問題が起きても大きなトラブルになりにくい仕組み」をあらかじめ整えておくことです。

保護者対応マニュアルの整備

文部科学省や各教育委員会では、保護者からの過剰な苦情・不当な要求への対応マニュアルが公表されており、組織的なルール作りの重要性が指摘されています。

学校でも、次のような内容を含む「保護者対応マニュアル」を用意しておくと安心です。

  • 電話・メール・面談の受付時間と窓口
  • 事実確認の手順(関係者への聞き取り、記録・データの確認など)
  • 対応記録の残し方と共有方法
  • 教員個人の連絡先や私的SNSでのやり取りを行わないルール
  • 迷惑行為が続く場合のエスカレーションフロー(担任→管理職→法人本部→顧問弁護士 など)

マニュアルは作って終わりではなく、職員会議や研修で繰り返し確認し、「誰が対応しても同じ説明・同じスタンス」で対応できる状態にしておくことが重要です。

外部専門家とのネットワーク構築

モンスターペアレント対応では、法的な視点だけでなく、心理・福祉・医療の視点が必要になることもあります。

  • 学校・教育分野に詳しい顧問弁護士
  • スクールカウンセラー・臨床心理士
  • 学校医・産業医
  • スクールソーシャルワーカー など

こうした外部専門家とのネットワークをあらかじめ作っておくことで、学校だけで抱え込まず、必要に応じて外部の力を借りるという選択肢を持つことができます。

当事務所のサポート内容とご相談のご案内

当事務所は、学校法人・幼稚園・保育園など教育機関側の企業法務・人事労務を重点的に取り扱っており、モンスターペアレントや保護者トラブルに関するご相談を多数お受けしてきました。

主なサポート内容は、次のとおりです。

  • 保護者トラブル個別案件の相談・交渉
    事案の経緯を丁寧に伺い、学校としてどこまで対応すべきか、最終的な「落としどころ」を一緒に考えます。必要に応じて、弁護士名での警告書送付や代理交渉も行います。
  • 保護者対応マニュアル・規程類の整備
    既にお持ちの規程との整合性を取りつつ、最新の裁判例や行政のガイドラインも踏まえ、実務で使いやすい形にブラッシュアップします。
  • 教職員向け研修・セミナー
  • 顧問契約による継続的サポート

おわりに ― 一人で抱え込む前に、まずはご相談ください

モンスターペアレントへの対応は、教職員の心身に大きな負担をかけるだけでなく、学校運営全体にも影響を及ぼし得る深刻な問題です。しかし、そのプレッシャーを学校だけで背負い込む必要はありません。

「この対応で本当に大丈夫だろうか」「教員が限界に近づいている」「これ以上エスカレートさせたくない」——そのようなお悩みがある場合には、トラブルが表面化してしまう前の段階でも構いませんので、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。

オンラインやお電話でのご相談予約も承っております。子どもたちが安心して学び、教職員の皆さまが教育活動に専念できる環境づくりのパートナーとして、当事務所をご活用いただければ幸いです。

Last Updated on 2026年2月5日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
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社会の課題に対し、私どもは「世のため、人のために尽くすことが、人間として最高の行為である」という理念にもとづき、これまで培ってきた法的技術やノウハウを駆使した創造的な解決策を提供することでこれを解決し、持続可能な人類・社会の進歩発展に貢献するという経営理念の実現に向けた挑戦を日々続けております。そして、「至高」という事務所名に込めた「社会正義の実現」、「社会の最大の幸福の実現」、「持続可能な人類社会の実現」に貢献するという高い志をもって努力をし続けて参ります。

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