人材サービス業

人材派遣業について

人材サービス業の中で、人材派遣業は、労働力を柔軟に提供するサービスとして日本の人手不足を下支えしてきました。派遣会社(派遣元)は雇用主として派遣社員を直接雇用し、派遣先企業に労働力を提供します。このビジネスモデルは、労働者派遣法、職業安定法労働基準法・労働契約法など複数の法律によって厳格に規制されており、違反時には事業停止命令や許可取消、刑事罰という重大な制裁が科されます。

中小・中堅の派遣会社にとって、コンプライアンス対応は大手と同水準が求められる一方で、専任法務部門を持たないケースが大半です。

その結果、契約書の不備、社内オペレーションと法改正のミスマッチ、トラブル発生後の初動遅れが重なり、立入検査などで不備を指摘されてから慌てて対処する―という悪循環が散見されます。

また、人材派遣業界は、景気動向や労働市場の変化に敏感に反応し、需要が増減するたびに法的課題も複雑化します。派遣先と派遣元、そして派遣社員という三者が関わる特性上、契約関係が入り組みやすく、トラブルが表面化した際には行政処分だけでなく、多額の損害賠償やブランド毀損に直結しかねません。

派遣先でのトラブル

ハラスメント

派遣労働者が派遣先でセクハラ・パワハラ被害を受けた場合、使用者責任(民法715条)は派遣先だけでなく派遣元にも及ぶ可能性があります。派遣先のハラスメント防止措置義務(改正労働施策総合推進法)に加え、派遣元にも被害申告の受付と再発防止義務が課されるため、両社で連携した調査体制を整えていないと損害賠償請求を受けやすい構造です。

サービス残業

「派遣労働者は派遣先の指揮命令下」という原則ゆえ、残業管理も派遣先が行います。他方、残業代の支払は派遣元が行います。そのため、派遣先が適切な労働時間管理を行っていない場合、派遣元に未払い賃金の支払債務を負うことになります。未払い賃金請求の時効は3年(労基法115条)に延長されており、遡及請求額が膨らみやすい点に注意が必要です。

派遣先からのクレーム

派遣元が複数社入り乱れる現場では、派遣先が「御社の社員のマナーが悪い」と即時交替を要求することがあります。派遣元が派遣社員に帰責事由なしと判断しても、契約書に一方的解除条項があると受け入れざるを得ず、売上減少や派遣社員の雇用維持コストが経営を圧迫します。適正な交替要件を契約書に明示し、解除時の損失補填条項を置くことが不可欠です。

人材派遣業トラブルを放置するリスク

トラブルは「発覚の瞬間こそ最小損害」という鉄則があります。それを疎かにすると、以下の五段階で経営に打撃が波及します。

行政指導・是正勧告

労働局の調査で違反が指摘されると、是正勧告書が発行されます。ここで改善計画を提出できない場合、事業停止命令や許可取消という致命的な処分につながります。

損害賠償請求の増幅

未払賃金や慰謝料は「付加金」「遅延損害金」が加算されるため、解決が一日遅れるごとに支払額が肥大化します。特に残業請求は三年遡及が認められ、十名規模でも千万円単位へ膨らむことは珍しくありません。

訴訟・労働審判の連鎖

集団訴訟型の紛争は一つの勝訴が全社員に波及し、同様の訴えが継続的に提起されます。係争コストが膨大になるだけでなく、対応のため営業リソースが枯渇し、本業の拡大機会を逸します。

ブランド毀損と取引停止

行政公表や SNS 拡散により「違反企業」の烙印が押されると、派遣先となる大手クライアントは、コンプライアンス方針に従い取引を打ち切ります。派遣元の主力取引は長期契約に支えられるため、大手クライアントを一社失うだけで月間売上が数千万円減少する危険があります。

優秀人材の流出と採用難

派遣社員にとって「安心して働ける派遣元か」は選択基準の上位です。法令違反に関する情報は口コミで急速に拡散し、登録者数の減少に繋がります。結果的に、派遣元で人材が枯渇し、派遣先企業からの注文に応えられず、さらなる売上減に直結します。

このように違反状態の放置による二次・三次損害についても、経営者が警戒すべきポイントです。

人材派遣業トラブルでの弁護士によるサポート

当事務所は多くの顧問先からの相談事例等を通じ、派遣業特有のリスクに即した支援を行っています。

契約書

・派遣基本契約、個別契約、機密保持契約、紹介契約を一括レビューし、責任分担・損害賠償範囲・解除要件を明確化します。

・依頼者と協議をしながら、依頼者に合った無期転換や同一労働同一賃金に対応した条項案を提案します。

クレーム対応

・派遣先からの交替要求や損害賠償請求について、事実調査→交渉方針策定→文書回答までワンストップで対応。

・ハラスメントや情報漏えいなど重大事案では、外部専門家を交えた第三者委員会方式を提案し、迅速に事実関係を確定させます。

人事労務トラブル

・未払賃金請求や労災補償請求に対し、交渉段階から労働審判、訴訟段階まで対応します。

・就業規則、評価制度、時間管理システムを統合的に見直し、再発防止策を社内に定着させます。

Last Updated on 2025年7月9日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
事務所メッセージ
社会の課題に対し、私どもは「世のため、人のために尽くすことが、人間として最高の行為である」という理念にもとづき、これまで培ってきた法的技術やノウハウを駆使した創造的な解決策を提供することでこれを解決し、持続可能な人類・社会の進歩発展に貢献するという経営理念の実現に向けた挑戦を日々続けております。そして、「至高」という事務所名に込めた「社会正義の実現」、「社会の最大の幸福の実現」、「持続可能な人類社会の実現」に貢献するという高い志をもって努力をし続けて参ります。

千代田区の顧問弁護士 問い合わせバナー

お問い合わせはこちらから

    企業名*


    (例:○△□株式会社)

    部署名


    (例:○△□部)

    お名前*


    (例:山田 太郎)

    お名前 (カナ)


    (例:ヤマダ タロウ)

    Eメール


    (例:xxxxxx@xx.xx)

    郵便番号


    (例:123-4567)

    住所


    (例:○○県○○市○○町 ○○)

    電話番号*


    (例:00-0000-0000)

    FAX番号


    (例:00-1111-1111)

    お問い合わせ内容

    ご確認

    ご入力の内容はこちらで宜しいでしょうか?今一度ご確認頂き、宜しければチェックを入れて送信ボタンをクリック下さい。


    人材サービス業の関連記事はこちら

    ご相談のご予約はこちらから TEL:03-5209-3801 受付時間9:30~17:30 至高法律事務所 ご相談のご予約はこちらから TEL:03-5209-3801 受付時間9:30~17:30 至高法律事務所 メールでのお問い合わせ