建設・不動産業

建設業で顧問弁護士をお探しの方へ

建設業について

建設業は、ビル・マンション・戸建てなどの建物から、橋やトンネル、道路などの公共インフラに至るまで、多様な建造物を施工する業種です。建設業を営む企業は、建物の設計や施工だけでなく、人材管理や工事費の管理、下請会社との連携など、多岐にわたるタスクを担います。こうした状況でトラブルが起きると、対処が遅れることで事業にダメージを与えかねないため、弁護士による適切なサポートが重要になります。

(1)建設業の多様性

建設業は住宅やマンションなどの住環境関連、商業施設やオフィスビルなどの事業環境関連、さらには公共事業に関わる土木工事やインフラ工事など、あらゆる建設プロジェクトを取り扱います。そのため、許可や法令対応も多方面にわたり、建設業法や下請法、労働基準法などの法的ルールを守らなくてはなりません。

(2)建設業の特徴的なリスク

建設工事は、多くの業者や下請会社、資材調達先など、多数の関係者が参加します。工期の管理や施工上のミスがトラブルを招くこともありますし、追加工事や変更工事の発生で見積もりが膨らんだり、支払い条件でもめるケースが出てきます。特に契約書の内容が曖昧だった場合、どこまでが本工事で、どこからが追加工事や変更工事に当たるのかで対立が生じ、トラブルが拡大することが多いです。

(3)建設業トラブルが経営を圧迫する可能性

建設業のトラブルは、しばしば大きな金額が動く点で深刻さが増します。数千万円単位で請負代金や追加・変更工事代金の未払いが発生すると、会社のキャッシュフローに直接影響して倒産リスクを高める可能性があります。さらに、工事が滞ったり品質に問題が生じると、信用問題に発展する場合も考えられます。

(4)弁護士のサポートが必要な理由

弁護士は、こうした建設業独特の問題を法律の観点から整理し、早期解決に向けた交渉や法的措置を提案します。建設業の経営者が法的な観点を踏まえて対応することは、トラブルを最小限に抑え、事業を円滑に進めるために不可欠です。建設業は工事の規模や期間が長いことも多いため、問題の発生が早期に顕在化しづらく、気づいた時には手が付けられないほど複雑化していることがあります。そこで、初期段階から弁護士に相談しておくことで、大きな紛争を防ぎやすくなります。

当事務所がこれまで取り扱った事件にも、請負契約書に添付された明細や図面が曖昧で、追加工事や変更工事に関する契約書や合意書、打ち合わせ議事録などが十分に作成されないまま、完工予定日に間に合わせるために、工事現場の都度の判断で施工を進めたために、完工後になって追加・変更工事代金の支払義務の有無をめぐって激しく対立した案件が多くあります。こういった建設業に生じやすいトラブルの性質からも、早期に弁護士へ相談して対策を講じることが大切です。

建設業における法的トラブルについて

(1)請負代金・契約書

建設業のトラブルで多いのが、請負代金をめぐる紛争です。大規模な案件では、請負代金の金額が何千万円、何億円という単位になるため、トラブル化すると請負業者の負担は大きくなります。支払いを受けられないと下請会社への支払いもままならなくなり、連鎖的に倒産リスクを高める懸念もあるでしょう。

よく見られるケースは「契約書(添付資料を含む)が曖昧である」または「口頭で合意した工事内容などがきちんと書面化されないまま工事を始めてしまう」というものです。工期、工事の内容、支払いスケジュールなどがきっちり決まっていないと、途中で認識のずれが発生しやすくなります。言った言わないの水掛け論にならないためにも、最初に契約書を作り、着工前に双方が内容を十分に理解・合意していることを確認してください。契約書の書き方が分からない場合や、内容が適正か不安な場合は、弁護士にチェックを依頼して、法的にも実務的にも有効な契約書を準備することが肝心です。

(2)追加工事・変更工事

追加工事や変更工事は、建設業の現場でよく問題になります。工事が進むにつれて、設計図との食い違いが見つかるケースや、施主の要求が増えるケースが頻繁に起こります。たとえば、木造住宅のリフォームを行う際、壁をはがしてみたら構造に不具合があることが分かり、その補強工事が追加で必要になることがあります。このような場合、追加工事をどの範囲まで行うのか、費用負担をどうするのかを明確にしないまま進めると「初めに聞いていた予算と違う」と発注者が不満を持ち、トラブルに発展することが多いです。

弁護士から見た対処法としては、まず契約段階で「追加工事や変更工事はどのようなプロセスで決定し、どのように費用を算出するのか」を具体的に書面に落とし込んでおくことが必要です。小さな変更であっても口頭のみで進めると、後から「そんな説明は聞いていない」と責任の所在をめぐる紛争になります。当事務所がこれまでに取り扱った事件でも、発注者から着工後に追加・変更の要求がなされ、これに応じて追加・変更工事を行った結果、当初見積もりの2倍以上の費用がかかったにもかかわらず、追加・変更工事に関する合意書をその都度交わしていなかったために「追加で費用が掛かるとは説明されていない」「追加で費用が掛かると知っていたら要求しなかった」「これ以上の費用は負担したくない」と発注者に拒絶され、結局、長期間に及ぶ訴訟に発展したケースがありました。このように、追加工事や変更工事が生じる場合は、当初の契約書や見積書に加え、その都度、追加工事契約書を交わすことで予防的にトラブルを回避する必要があります。

(3)契約不適合(瑕疵)

建設業における契約不適合、いわゆる瑕疵(かし)とは、完成した建物や設備の種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない欠陥や不具合がある状態を指します。法律的には2020年4月1施工の改正民法により「契約不適合責任」という概念に変わりましたが、現場ではいまだに「瑕疵」という言葉を使うことも多いです。契約不適合(瑕疵)が見つかると、発注者から「手直しをしてほしい」「賠償金を支払ってほしい」という請求があり、補修工事の負担や費用の支払いをめぐって揉めるケースがあります。

請負契約書には、瑕疵担保責任や契約不適合責任として一定の保証期間や補修義務を定めている場合がほとんどであり、契約書に定めていなくても、民法や住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく義務を負うこととなります。そのため、「どの部分が設計や施工のミスなのか」を正確に把握し、契約不適合(瑕疵)の範囲を特定する必要があります。特に、築年数が長い建物のリフォーム工事の場合、もともとの老朽化なのか施工ミスなのか、原因をはっきりさせることが紛争解決の鍵となります。請負業者としては、請負契約書で補修義務や保証期間を明確にし、トラブルが起きた場合は専門家に調査を依頼し、早い段階で弁護士と連携することが望ましいです。

建設業トラブルを放置するリスク

建設業で発生したトラブルを放置すると、経営上の大きなリスクに発展する可能性があります。特に、工期の遅れや追加費用の負担、契約不適合(瑕疵)の発生などは時間が経つほど問題が複雑化し、解決にかかる費用と労力が増える傾向があります。

(1)請負代金の未回収リスク

建設業では、着工前や工事途中で一部を請求し、完成後に残金を精算することが一般的です。トラブルが起きたまま放置すると、発注者に支払いを拒否され続けるケースもあり、会社のキャッシュフローに重大な影響が出ます。さらには、未回収の代金を手当てできず下請会社へ支払いができなくなり、連鎖的に倒産トラブルに巻き込まれる事態も考えられます。

(2)社会的信用の失墜

建設業は信用がものを言う業界です。近隣や取引先から「ここは過去にトラブルで裁判沙汰になった」と見られると、新規受注が減少したり、資材調達先の与信が下がったりします。さらには、人材確保が難しくなる可能性もあります。すでに従業員を抱えている場合、会社全体の士気が下がって離職につながるケースもあります。

(3)解決コストの増大

紛争が発生したら、弁護士は早期の解決を推奨します。理由は、時間が経つにつれて証拠の散逸や関係者の記憶があいまいになるため、正確な事実関係を立証しづらくなるからです。また、損害の拡大や遅延損害金が発生することも懸念されます。

(4)早めの相談が最善策

建設業を営む企業としては、問題が生じたらできるだけ早く弁護士へ相談し、交渉や法的手続きを視野に入れた戦略を立てることが望ましいです。こうすることで、損害を最小限にとどめ、社会的信用を損なわずに済む可能性が高まります。

建設業トラブルでの弁護士によるサポート

(1)弁護士が関わると何が変わるのか

建設業トラブルに弁護士が関与すると、法律的な主張と客観的な証拠をもとに、相手方との交渉を適切に進められます。さらに、問題が複数の領域にまたがっている場合でも整理できるため、トラブルの解決が加速する可能性が高まります。

(2)対外的な信用保護

交渉段階から弁護士が同席することで、相手方も「無茶な要求を通そうとしても法律的に通用しない」と理解し、話し合いがスムーズになることがあります。特に、追加工事や契約不適合(瑕疵)の範囲をめぐる争いでは、客観的な書面や法令に基づいた主張を展開する必要があり、弁護士の専門的なサポートが役立ちます。

(3)トラブル収束のスピードアップ

当事者同士で話し合うと感情的な対立が先行しがちですが、弁護士が冷静に事実関係を整理し、双方の利害を調整することで、時間と費用を節約できる可能性が高まります。

(4)根本的な解決策の提案

弁護士は、発生した紛争の解決だけでなく、将来のトラブルを予防するための契約書作成や顧問契約などを提案します。こうした取り組みを行うことで、同じ種類のトラブルに再度巻き込まれるリスクが下がり、経営を安定させることができます。

(5)主なサポート内容

ここからは、建設業トラブルにおける弁護士のサポート内容を5つの観点で解説します。

ア 発注者対応

発注者とのトラブルは、請負代金や追加工事費用、工事の品質など、さまざまな論点が絡み合います。たとえば「工期が遅れたから代金を減額してほしい」「追加工事の費用は施工業者持ちで対応すべきだ」など、発注者側の主張が強いときに、弁護士が法的根拠を示しながら対応すると、理不尽な要求を拒否しやすくなります。

発注者から着工後に追加・変更の要求がなされ、これに応じて追加・変更工事を行った結果、当初見積もりの2倍以上の費用がかかったにもかかわらず、追加・変更工事に関する合意書をその都度交わしていなかったために「追加で費用が掛かるとは説明されていない」「追加で費用が掛かると知っていたら要求しなかった」「これ以上の費用は負担したくない」と発注者に拒絶され、結局、長期間に及ぶ訴訟に発展したケースがありました。

当事務所がこれまでに取り扱った事件でも、発注者の着工後の追加工事、変更工事の要望が多く出たために工期を延長せざるを得なかったにもかかわらず、発注者が「施工管理が杜撰だから遅れたのだ」と責任を追及して大幅な値引きを要求したという案件がありました。この案件では、弁護士が請負契約書、着工後になされたメールの精査、発注者との打ち合わせ内容の聴き取りなどを行い、完成が予定日よりも遅れた原因が施工者の責めに帰すべき事由にないことを反論しました。このように弁護士が間に入って交渉をサポートすると、発注者との対立が感情的な言い争いに発展するのを回避できます。

イ 建設業法対応

建設業には建設業法の規定があり、許可や業種区分、請負契約の締結方法など、細かいルールがあります。違反した場合は行政処分や営業停止、許可取消のリスクがあるため、建設業の経営者は建設業法に対して常に注意を払う必要があります。

弁護士は、建設業法に違反しない契約書の作成や、万が一許可要件に不備が生じた場合に早期に対応する方法をアドバイスします。建設業法は頻繁に改正される部分もあり、常に最新情報をキャッチアップしないと気づかないうちに違反状態になっている可能性もあるので、顧問弁護士を置くことで定期的にチェックが可能です。

ウ 人事労務

建設業は人材不足が深刻化しており、働き方改革や安全管理など労務関連でのトラブルも無視できません。たとえば、長時間労働による未払い残業代や、現場作業での労働災害が起きた場合の企業責任、職人とのトラブルなど、人事労務の問題は経営を揺るがします。

弁護士は、労働基準法や安全衛生法などの法律に基づいて、就業規則の整備や労使間トラブルの未然防止策を提示します。

エ 契約書

建設業の契約書は、請負代金、工期、追加工事、瑕疵担保責任(契約不適合責任)、解約条件など、数多くの条項を定める必要があります。これらを適切に規定しておかなければ、トラブルが発生したときにスムーズに解決できず、時間やコストを浪費する結果になりがちです。

最近では、インターネットで契約書のテンプレートをダウンロードすることができる場合もありますが、内容を吟味せずに使っていると、思わぬトラブルが発生することがあります。そこで、弁護士に契約書の作成やレビューを依頼することで、紛争時に不利になる契約書を締結することを防ぐことができます。

オ 請負代金回収

建設業の経営者にとって、請負代金回収は最も重要な問題の一つです。工事が完了していても、発注者から「工事の仕上がりに不満がある」「追加工事の費用が高すぎる」などの理由で支払いを拒否されるケースは少なくありません。特に大規模工事では一度に回収できないとキャッシュフローが急激に悪化し、下請会社への支払いも滞り、連鎖破綻のリスクが高まります。

弁護士は、請負代金を回収するための交渉や、調停や訴訟の提起など、法的手段を駆使して解決を図ります。

建設業について弁護士に相談するメリット

(1)リスク予防とトラブル解決が同時に可能

弁護士に相談する最大のメリットの1つは、発生してしまったトラブルへの対処だけでなく、将来のリスクを予防できる点です。契約書や社内ルールの段階から弁護士のチェックを受けることで、問題が顕在化する前に対応策を講じられます。

(2)専門知識による説得力の確保

法律や業界特有の慣習に精通した弁護士が発注者や下請会社と交渉することで、相手方は安易に無理難題を押し通そうとはしなくなります。法的根拠のある主張をすることで交渉を有利に進められ、問題が早期に収束する可能性が高まります。

(3)会社の信用力向上

経営者が弁護士と連携していること自体が、会社としてリスク管理をしっかり行っている証拠となり、ステークホルダーからの信用度が増すこともあります。

(4)経営の安定化と拡大

問題発生時にすぐに弁護士へ相談する体制を整えておくことで、無駄なストレスと出費を削減し、安定した経営基盤を築くことができます。

まとめ

建設業のトラブルは、追加工事、契約不適合(瑕疵)、請負代金未払いなど、現場が複雑であるほど多様な形で発生します。放置してしまうと請負代金が回収できず経営が圧迫され、社会的信用の失墜や労務問題などの二次トラブルを引き起こすリスクも高まります。そこで、弁護士を活用し、早期かつ適切に問題へ対処することで、被害を最小限に抑え、会社の健全な発展を図ることが可能になります。

本ページのテーマである「建設業のトラブル発生時の弁護士によるサポートの重要性」に深く関心を持った建設業経営者の方には、法律顧問サービスの利用をおすすめします。建設業法対応から契約書チェック、発注者や下請会社との交渉、労務管理に至るまで、幅広い業務を総合的にサポートできるのが法律顧問の強みです。日常的に弁護士に相談できる体制を整えることで、建設業のトラブルを未然に防ぎ、より安心して経営に集中できるでしょう。

建設業でトラブルが発生した場合は、できるだけ早期に弁護士へ相談し、事態の悪化を食い止めることがベストです。

Last Updated on 2024年12月25日 by sicoh-law-com


この記事の執筆者:至高法律事務所
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    視野角から、ガラス窓の下のアルミの桟(さん)が何cm離れれば見えるかを計算し主張した事案

    企業概要

    エリア:東京都
    業種:不動産管理業
    規模:従業員1000人以上
    ジャンル:管理している不動産の瑕疵の有無
    解決までの期間:2年以上の長期訴訟の争点の一つ

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    建築物の瑕疵をめぐる紛争において、ある特定の条件のもと、子どもの視野で、ガラス窓の下のアルミ桟(さん)が視野に入っているのかが争点の一つになりました。

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